pumpの共同創業者である小船と三本菅。テレビと広告、それぞれ異なるフィールドで経験を積んだふたりが、今では多彩な映像制作を手がけるpumpをリードしています。
今回の対談では、学生時代の出会いから創業の裏側、現在のMissionに至るまでの変化、そして「どんな人とこれから一緒に働きたいか」まで、本音を語ってもらいました。
創業経緯
Q)まずは、お二人の映像との出会いについて教えてください。
三本菅:もともと映画を作りたいと思っていて、大学ではサークルに入って自主制作をしていました。ただ、単に映像を作ることよりも、「消えていく思い出を残したい」「時間を封じ込めたい」といった気持ちが強かったですね。

(三本菅)
小船:僕は小説家志望で文学部に通っていたんですが、たまたま始めた映画館のアルバイトで三本菅に出会って、映像制作に誘われたのがきっかけです。最初は「創作の糧になればいいな」くらいでしたが、映像に関わる人たちの熱量や面白さに惹かれていきました。
Q)お互いの第一印象はどうでしたか?
三本菅:映画館のスタッフはほとんどが学生で、その中に小船がいました。最初はちょっと控えめな印象だったけど、話してみると芯があって信頼できそうだなと。にぎやかなタイプより、落ち着いた人のほうが自分には合っていたんだと思います。
小船:当時私はサークルにも入っていなくて、何に打ち込むでもなく過ごしていたのですが、そんな中で自主制作に情熱を注ぐ三本菅がすごくかっこよく見えました。見た目も雰囲気も印象的で、「この人と一緒にいたら、何か面白いことが起きそうだな」と思ったのを覚えています。
Q)そこからどのような流れで一緒に映像制作をするようになったのですか?
三本菅:僕が自主映画を撮ることになって、脚本も演出もやるんだけど、当然ひとりじゃできない。そこで、サークル仲間やバイトの友人たちに声をかけて、小船もそのひとりとして加わってくれました。当時は「今後も一緒にやろう」なんて考えてなくて、本当にそのときどきの「楽しい」がモチベーションでした。
Q)その後の就職活動は、どのように進んだのでしょうか?
三本菅:正直、就職する気はあまりなかったんです。脚本を極めたかったので。ただ、2〜3社だけ受けてみたらTBSビジョン(現TBSスパークル)に受かってしまって。テレビ番組には特に興味がなかったんですが、「せっかくだし、やってみるか」と思って入社しました。ADとして2〜3年働いて、最終的に5年で退職しました。かなりハードでしたが、技術的な土台は身についたと思います。
小船:僕はAOI Proに入社しました。PM(プロダクションマネージャー)として、テレビCM制作の基礎を現場で学びました。
Q)独立後、お二人は再びつながり、pump設立へとつながっていくんですね。
三本菅:はい。僕はテレビ制作会社を辞めたあと、アジアを旅したり、中国にいる知人を訪ねたりして、特に明確なキャリアプランもないまま過ごしていました。帰国後も仕事はなくて、とりあえず「映像ディレクター」って書いた名刺だけ作って(笑)、知り合いに配っていたんです。
そんなとき、小船が広告の仕事で頑張っているという話を聞いて。連絡をとったら、AOI Pro.の案件を紹介してくれて、そこからふたりで映像制作をするようになりました。
そのうち、オフィスを借りて、アシスタントも必要になってきて。「これはもう法人化した方がよさそうだね」と。ロケ地を借りるにも法人のほうが動きやすかったし、制作体制をきちんと整える必要が出てきていたんです。

(立ち上げ初期の富ヶ谷オフィスでの様子)
小船:とはいえ、最初から「会社を大きくしよう」といったビジョンがあったわけではなくて。学生時代に趣味で始めた創作活動を、ようやく“ちゃんとした仕事”として形にできるタイミングが来た、という感覚でした。
Q)創業当初はどんな活動をしていましたか?
三本菅:CMのプレゼン映像やVコン*など、表にでる機会が少ない仕事が中心で、自分たちが本当にやりたいこととは少し違っていて。ただ、「自分たちはもっと評価されてもいいはずだ」という想いはありました。そうした受諾の案件に加えて、BOVAなどの映像コンペに応募して実績を積んでいきました。
小船:僕らには「実績がないから仕事が来ない、仕事がないから実績ができない」というジレンマがあって、それを打破するために動いていた時期でした。先ほどのBOVAもそうですし、他にもWeb動画を100本制作する大規模案件に挑戦していました。制作体制を見直すきっかけになり、組織としての意識が芽生えた瞬間でもありました。
*Vコン:映像の企画段階で用いる「ビデオコンテ」の略称で、音声や仮映像を用いて完成イメージを伝えるプレゼン資料の一種
pumpのMission
Q)現在のpumpのMissionについて、どのように捉えているか、教えてください。
小船:創業してからしばらくは、とにかく自分たちのことで手いっぱいでしたね。「自分たちはもっと評価されていいはずだ」「世の中を見返してやるぞ」みたいな気持ちが、原動力になっていたと思います。
三本菅:うん、その感覚はすごくよくわかります。とにかく目の前の仕事をこなすのに必死で、余裕もなかったし、まっすぐだった分、尖ってたところもあったかもしれない。
小船:でも、がむしゃらにやっているうちに少しずつ実績が積み上がってきて、ありがたいことに評価も得られるようになってきました。そうなると、自然とクライアントや世の中に目を向けられるようになってきたんです。
Q)いま掲げているMissionは、そうした経験の積み重ねのなかで生まれたものなんですね。
小船:はい。今のMissionは「伝えたいを''汲み上げ'' ''送り出す'' 人々を繋ぐpumpであれ。」です。自分たちがやりたいことだけではなくて、クライアントが届けたいメッセージや、社会に対して何ができるかを考えるようになった。そういう姿勢が、今の自分たちにはすごくフィットしているなと思っています。
pumpの特徴・強み
Q)pumpの強みは、どのような点にあると思いますか?
三本菅:今でこそ「テレビ」と「広告」という異なる業界で経験を積んだ小船と自分の組み合わせは強みだと感じていますが、最初はそこまで意識していませんでした。でも、ここ数年でメディアやプラットフォームの境界がどんどんなくなって、業界間の融和が進んでいます。
テレビ業界は「スピードと継続性」が重視され、効率と制作力の積み重ねが価値。
広告業界は「一点突破のクオリティと演出性」が重視され、見た目の完成度に投資。
という特性を持っていて、同じ映像制作でも使う機材が違ったり、スタッフの単価も違いましたが、テレビ番組の知見を持ったプロデューサーが企業のWeb広告を手掛けたり、広告業界のディレクターがテレビドラマを制作するなど、映像ジャンルや文法の垣根がどんどん曖昧になっているんですよね。
その流れの中で、それぞれ異なる領域で培ってきた視点やワークフローが自然と融合できるようになって、「これってpumpにしかないバランスかも」と感じるようになりました。

(職種問わず対話機会が多いpumpメンバー)
小船:うちはジャンルで区切らないんですよね。ドキュメンタリーもやるし、MVも企業の映像もやる。何かに特化するというより、「この目的のためには、どんな映像表現がベストか」を考えてつくる。だから、クライアントの課題や届けたい相手に合わせて、どんなジャンルでも対応できるチームであることが、結果として大きな強みになっていると思います。
三本菅:CM的な流儀にも、テレビ的な流儀にも対応できる。案件ごとに最適なワークフローを選べる柔軟性も、他にはあまりない特長かもしれません。
どんな人と一緒に働きたいか
Q)最後に、pumpで一緒に働く仲間として、どんな方に来てほしいと考えていますか?

小船:僕は「ジェネラリストを目指したい人」と一緒に働きたいと思っています。特定のジャンルに閉じず、プロジェクトによっていろんな役割を柔軟に担える。それがpumpらしさでもあるので、物事の本質を見抜きながら、自分の幅を広げていける人が合うと思います。
三本菅:小船と同意見ですが、あえて補足すると、ジェネラリストを「マルチスペシャリスト」という表現が私にはしっくりきます。1つの専門性を持っているのは大前提として、それを2つ、3つと掛け合わせて自分の価値を高めていく人。今の時代にフィットするのは、そういう複合的な強みを持つ人材だと感じています。
小船:実際に面接をしていても、「いろんな経験を積みたい」「将来の可能性を広げたい」と話す方が多いです。そういう思いを持っている人にとっては、うちのような環境はすごく合うと思いますね。
三本菅:そうですね。pumpには、ジャンルも規模もいろいろな案件がありますし、社内でも複数の領域を経験する人が多い。だからこそ、「視野が広く、オープンマインドであること」がとても大事です。柔軟に学び、自分の可能性を自ら広げていける人と、これからのpumpを一緒につくっていきたいと思っています。