大学在学中から映像制作に関わり、卒業後はフリーランスとしてVシネ、イベント撮影、助監督など幅広い経験を積んできたナカムラ。pumpには創業メンバーと共に現場を支える中で合流し、現在はディレクターとして、演出・撮影・編集まで一貫して映像に向き合っています。
「映像は、かっこいいより“伝わること”の方が大事」。そう語るナカムラに、これまでの歩みやpumpでの仕事のリアル、そして映像を志す人へのメッセージを聞きました。
映画が“生きるヒント”だった —— 地方出身の“映像少年”が見つけた道
Q)大学在学中から映像制作をされていたとのことですが、最初に「映像を仕事にしよう」と思ったきっかけは何でしたか?
ナカムラ:小中高と映画がずっと好きで、原点は父が『スター・ウォーズ』など映画好きだったことにあります。家にはビデオがたくさんあって、それを繰り返し観ていました。思春期の頃、音楽や小説よりも、映画が自分にとっての生きるヒントになっていたと思います。ただ、周りに同じような映画好きの友人がいなくて、孤独感も感じていましたね。

田舎で育ったので、映像を学べるような環境もなく、選択肢も限られていました。
本当は東京の専門学校に行きたかったのですが、将来の見通しが立ちにくい専門よりも大学の方が良いのではという両親の判断もあり、四年制大学に進学しました。大学では映像系のサークルや部活に入り、映像や映画について対話ができる仲間が見つかり、ようやく孤独感から解放されたような気がしました。
卒業後は、大学の先輩が運営する映像制作会社に入って、撮影や録音などを担当しながら、いわゆる“映像フリーター”的な形でキャリアをスタートしました。
現場でできることを増やしていった、フリーランス時代
Q)学生時代やフリーランス時代には、どのようなジャンル・案件を多く手がけていましたか?
ナカムラ:学生の頃から20代中盤までは、幼稚園の運動会など、イベント撮影が多かったですね。視聴者が明確で、「誰かにとって大切な映像をつくっている」という実感がありました。 周囲には、自主映画をやっている人やVシネの現場に関わっている人などもいて、自分も刺激を受けました。僕自身も自主映画をつくったり、Vシネの助監督をやったり、幅広く活動していました。
当時から「いずれは演出でいい作品をつくりたい」と思ってはいたのですが、助監督などの現場仕事にも一生懸命取り組んでいました。
自分がしんどかったときに救ってくれたような映像を、今度は自分がつくりたい。不特定多数の中で選ばれ、誰かにとってのそれになれるような作品を、と思っていました。
pumpとの出会いと、ディレクターとしての一歩
Q)pumpとの出会いを教えてください。
ナカムラ:学生の頃から映像制作の現場で、代表の三本菅さんと出会っていました。26〜27歳くらいのときに、助監督として声をかけてもらって、ちょうど作業場を探していた時期だったこともあり、富ヶ谷のシェアオフィスで一緒に作業するようになりました。
当初は、広告映像の世界には多少の違和感を覚えることもありました。「この映像、誰に届くんだろう?」と考えることもあったし、そもそも広告って自分に合うのかな?という戸惑いもありましたね。でも、とにかく一生懸命やってみようと思ってやってきた感じです。 三本菅さんは、自分にとって“東京の兄貴”みたいな存在ですね。
Q)その後pumpにはどういった経緯で正式に「ジョイン」したのでしょうか?
ナカムラ:その後、三本菅さんと、同じく代表の小船さんがpumpを法人化する流れになって、自分は当初、他の案件もあったので業務委託という形で関わっていました。 2〜3年ほど経ったタイミングで正社員になりました。業務委託時代はアシスタント的な立場が多かったのですが、pumpではディレクターとしてチャレンジさせてもらえる機会が増えてきて、「ここでもっとやっていきたい」と思ったのがきっかけです。
また、フリーランスだと一緒にやる人が固定されがちなんですけど、pumpではいろんな人と関わることができる。それが自分にとって大きな学びになると感じました。
Q)組織に入る不安や葛藤はありませんでしたか?
ナカムラ:あんまり不安はなかったです。「とりあえずやってみよう」というスタンスなので。 ただ、フリー時代に一緒にやっていた仲間との関係が薄れるのは避けたかった。今でも副業というかたちでその関係を続けられていて、それがすごく嬉しいですね。pumpの案件でお願いすることもあるし、それ以外でも一緒にやっています。
Q)フリーランスから会社員になることで得られるものは何だと思いますか?
ナカムラ:一番は、職種の幅が広がることだと思います。フリーだと、これまでやってきたことの延長でしか仕事が来ないんですよ。たとえば、助監督の仕事ばかり受けていると、それが当たり前になってしまう。 でも会社であれば、「これやってみる?」って言ってもらえる機会がある。自分のスキル以上のことに挑戦できるのは、大きなメリットだと感じます。
それに、チームで動ける安心感もあります。体調を崩したときに編集を手伝ってもらえるとか、ひとりで抱え込まなくていいのは、精神的にも助けられますね。
演出も撮影も編集も。「全部やる」働き方と、そのおもしろさ
Q)pumpに入社後、初期に関わった仕事やプロジェクトはどんなものでしたか?
ナカムラ:ディレクターとして初期に関わったもので強く印象に残っているプロジェクトは、北海道のバレーボールチームを追ったドキュメンタリーでした。週1本、20分の映像を5週連続で納品するという、今思えばかなりハードな案件でした。 番組的な構成で作った経験がなかったので、正直扱いも分からず、無我夢中でやっていましたね。

三本菅さんや小船さんと一緒に、夜通し編集作業をしたのを覚えています。ちょうどコロナの時期でもあって、大変ではあったんですが、それでも「いいものができたかどうか」より、「とにかくがんばった」という記憶が強いです。 綺麗に整った映像じゃなくても、ぐちゃっとしててもいいから、ちゃんと誰かに伝わるものをつくりたい。そんなふうに強く思っていました。
Q)pumpではどんな役割や案件に関わることが多いですか?
ナカムラ:ディレクターとして、演出を中心に、撮影や編集まで自分でやることも多いです。広告とかWebCMとか短尺の映像が多いですが、ミュージックビデオを担当することもあります。 pumpのディレクターって、いわゆる「演出だけやる人」って感じではなくて、企画から編集まで幅広く関われるのが面白いですね。
「綺麗なだけじゃ伝わらない」感情に届く映像のつくり方
Q)演出をする上で、特に意識していることはありますか?
ナカムラ:そのストーリーの中で「何を大切にすべきか」を考えるところから始めます。登場人物が高校生であれば、彼らの生活や心情が自然と伝わるような演出を心がけます。たとえば、食べているハンバーガーだったり、光の入り方だったり。そういった細部が映像に与える影響はすごく大きいと思います。依頼主の伝えたいメッセージを、ナチュラルに届けたいというのが自分のスタンスです。わざとらしさを出したくないというか、あくまで自然体で伝えたい。そういう映像が、自分は好きですね。
Q)最近印象に残っている案件はありますか?
ナカムラ:イチローさんが登場する動画(GLOVEについて話すもの)とか、ポカリスエットの映像も印象深いです。
(MIZUNO BASEBALL JP YouTubeチャンネル)
あと、個人的にはこの動画が特に好きです。
(エプソンコーポレートYouTubeチャンネル)
カメラを引きでFIXして、長玉で抜くような構図。自分の演出スタイルが素直に出せた気がしています。
Q)pumpの働き方の特徴はどんなところにありますか?
ナカムラ:意見が通りやすい環境だと思います。自分の考えをしっかり持っていて、それをちゃんと説明できれば、受け入れてもらえる空気がある。 ただ、自我が強すぎるとたぶん合わない。自分のやりたいことと、チームでつくることのバランス感覚が大切だと思います。
映像を仕事にしたいあなたへ——ナカムラからのメッセージ
Q)今後、表現者としてどんな映像に関わっていきたいですか?興味のあるジャンルやテーマがあれば教えてください。
ナカムラ:自主制作や作品づくりにも挑戦してみたい気持ちはあるんですけど、今の時点では「これがやりたい」と明確に決まっているわけではないです。

仏教やマインドフルネス、政治といったテーマにも関心があるので、そういったジャンルにもいつか触れていけたらと思っています。今は、目の前の仕事を丁寧にやりながら、興味のあることに全力で取り組む。その先に、いつか自分の表現したいものが見えてくる気がしています。
Q)映像業界に飛び込もうとしている未経験者や、表現で悩んでいる人に向けて伝えたいことはありますか?
ナカムラ:いろんなことに興味をもって、まずはやってみるのがいいと思います。「やりたくないな」と思うことでも、一度は手をつけてみる。そこから意外と自分のやりたいことが見えてくることもあります。
そして、やりたいことが見えてきたら、どんどん口に出していった方がいい。周りに伝えることで、チャンスにつながることも多いです。 興味が散らかっているように見えても、それは悪いことじゃないと思います。すべての経験には意味があると考えて、前向きに取り組んでほしいです。 映像制作って、素直な人とか、実直に考える人に向いてる仕事だと思うので、自分のスタイルを大事にしながらやっていってほしいです。
Q)どういう人ならpumpで活躍できると思いますか?
ナカムラ:やったことのない職種や、新しい領域にチャレンジしたい人には、すごくいい環境だと思います。自分もそうだったので。 「まずやってみたい」と思える人にとって、いいスタート地点になるんじゃないでしょうか。 器用でバランス感覚がある人には、特に向いていると思います。複数の領域をまたいで柔軟に動ける人なら、活躍の幅は広がるはずです。