「成果物そのもの」だけでなく、"誰が、どんな想いで、どんなチームでつくったのか"まで届けたい。シリーズ「pump work」第2回をお届けします。
今回は、世界的作曲家・久石譲の名曲「Summer」を現代的なショートフィルムとして再解釈したMV企画。
公開から10日でオーガニック108万再生、現在は450万再生を超え、全世界からYouTubeにコメントが届いた本作の舞台裏を、プロデューサー・小笠原と、監督・三本菅に聞きました。
「ワクワクした」と「イヤでした(笑)」ふたつの正直な第一印象
このプロジェクトの第一印象を、ふたりはそれぞれこう語ります。
小笠原「ワクワクした、ですね。」
三本菅「イヤでした(笑)。誤解なきように言うと、すごく楽しみな反面、誰もが知っている名曲『Summer』を今になってMVにするということの意味合いや、それによって生じるこの曲を愛する人たちからの反応を想像して、プレッシャーを感じていた部分が大きいです。」
同じプロジェクトを前に、プロデューサーは純粋な興奮を、監督は責任の重さを——
それぞれが抱えたものは違う。でも、ふたりが同じ方向を向いていたことは、完成した作品が証明しています。
この案件を一言で言うと?
小笠原「当初にあった企画のコンセプトは、『Summerを現代版として再解釈する』、もっと言えば、『Summerをかけたらなんでもエモくなる』の証明です。」
それはリスペクトであり、挑戦でもありました。
「Summer」はただの人気曲ではありません。Z世代や海外ではまだ知られていない可能性を秘めた楽曲でもある。
この映像を通じて、「単なる過去の名曲」という枠を超え、現代の映像表現との高い親和性を実証する——
それが、このプロジェクトに託されたもうひとつのミッションでした。
プロジェクト概要
- Client:株式会社フジパシフィックミュージック
- 案件名:久石 譲 - Summer (Official Short Film)
- Role:企画・演出・制作(pump)
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コンセプトは「最後の夏」
来春に廃校を迎える架空の高校。放送部の学生たちが過ごす、最後の夏。
何かを残したいという、等身大の葛藤と日常——
その情景が、久石譲の「Summer」の旋律と重なり合う。そんな物語として設計されました。
三本菅「誰もが記憶の底に持つ、日本の夏の原風景を蘇らせたかった。」
主人公たちは、カメラを手にしています。
自分たちの夏を、映像に残そうとしている。その行為そのものが、この映像をつくったpumpの姿とも静かに重なっていきます。
3つの画角と、セリフを捨てる決断
クリエイティブの核心は、ふたつの大きな決断でした。
ひとつは画角の設計。
本編には3種類の視点が存在します。
「普遍的な物語」の説得力として選んだ4:3のスタンダード画角、放送部の主人公たちが撮影するスマホの縦型映像とオールドスタイルのビデオカメラ映像。
粒子が粗く、色がにじんだその映像は、ラストシーンで「映画の中の映像」として流れ、過去と現在を「Summer」の旋律の上で溶け合わせます。
もうひとつはセリフを一切なくすこと。
三本菅「セリフを入れるかどうかは、ギリギリまでスタッフ全員で議論しました。結果的には、セリフを排することで生じる解釈の余白を優先することにしました。」
言葉を消すことで、音楽そのものと、夏の音だけが強調されました。
そして、見る人それぞれが、自分の夏の記憶を重ねられる空間が生まれました。
さらに、公開前から登場人物たちの「日常」をSNSで発信するという設計も加えられました。
スクリーンの中の物語と、SNSの日常投稿が連動し、ただの視聴を超える立体的な体験が設計されたのです。
「菊次郎の夏」へのリスペクトと、もう一つの迷い
没になったアイデアや、悩んだポイントも少なくありませんでした。
「菊次郎の夏」へのリスペクトとして、クスッとくるユーモアのシーンをどこまで入れ込むか。
こちらは結果的に、スマホ縦型チームが自然な形で表現してくれました。
本編が、セリフを排した静かな情感で作品の核を描く。一方、縦型ドラマは言葉で物語を補い、縦型ショートはSNSでの拡散を狙う。
この重層的な構造が、作品全体の奥行きになりました。
そして、制作を通じてチームが繰り返し問い続けたのは、もっと根本的なことでした。
三本菅「『普遍的な夏の情景って、一体何だろう?』という問いは、ちょくちょく会話していたと思います。」
答えのない問いを、撮影の現場でずっと持ち続けること。
それが、この作品の誠実さの源にあったのかもしれません。
西伊豆の空の下で
ロケ地探しには難航しましたが、西伊豆のフィルムコミッションの皆さんの全力の支援によって、撮影が成立しました。
3日間の撮影中、ハプニングも絶えませんでした。
小笠原「撮影3日目という全員が佳境を乗り越えようと踏ん張っているタイミングで、制作の確認ミスにより、ロケ地の学校を退出しなければならない時間が迫っていることが直前で発覚しました。クライアントも含めた全員が総出で、学校中に散らばった荷物を外に運び出しました。」
「夜に開いている飲食店がほぼなく、タクシーも19時以降は動いていない、フィルムコミッションの方に相談しながら電話をかけ続けて、なんとか夜ご飯を確保した夜もありました。」
コンビニの駐車場で、アイスを食べた夜
3日間の撮影を終えた夜のことを、小笠原は今でも鮮明に覚えていると言います。
小笠原「コンビニの大きな駐車場で、機材を片付けたり、キャストが着替えたりしながら、みんなで解散までの時間を過ごしていたんです。そのとき、クライアントがアイスを全員に奢ってくれて。クライアントもキャストもスタッフも全員で、互いを讃え合い、感謝を伝え合った。文化祭の後みたいな感覚でした。全員が最大限のパフォーマンスをしてくれたからこそ、感動的な締めくくりを迎えられることができた、これこそプロデューサー冥利に尽きるなあ、と思いました。」
そしてもうひとつ、忘れられない瞬間があります。
撮影の途中で、この映像が久石譲さんのYouTubeチャンネルで公開されることが知らされたのです。
小笠原「自分たちの映像が、久石譲さんのYouTubeに載る……?! って(笑)。恐れ慄きました。」
成果
公開から10日で、オーガニックで108万再生。1ヶ月で230万再生、現在は450万再生を超えています。
YouTubeには日本語だけでなく、全世界から無数のコメントが届きました。
さらに、本作と連動して展開されたSNSアカウント「山崎西高校放送部の日常」は、総再生数2,000万回超えを達成しました。
そして、数字と同じくらい印象的だったのは、リアルな反応でした。
三本菅「SNSでの評価も感じつつ、リアルで会う人が、本当に全員くらい『観ました』と言ってくれました。ここまで多くの人が観てくれた作品は、今までもこれからもこの作品くらいしかない気がします。」
メンバー
- Movie Producer:小笠原紬月
- Director:三本菅 悠
- Production Manager:尾﨑正隆/正司飛翔
おわりに
「Summer」を現代の映像で再解釈することは、誰かの記憶に触れにいくような仕事でした。
プロデューサーは「ワクワク」を抱えて飛び込み、監督は「プレッシャー」を抱えて向き合った。そのふたつの緊張が交差するところに、この作品は生まれました。
セリフを排し、楽曲の力だけを信じ、撮影を積み上げた先に——
450万再生という事実と、全世界の人に普遍的な夏を蘇らせ、絶賛のコメントが寄せられた結果があります。
pumpはこれからも、「誰が、どのようにつくったのか」まで含めて伝えるコンテンツを発信していきます。
こんな熱量で一緒に作りたい人、募集中です!


